今年の春から月 1 で開催している、投資先向けの勉強会。
いい名前が思いつかないので「たつおゼミ」と暫定的に呼んでいるのですが、毎回スペシャルなゲストの方を講師としてお呼びして、「はじめての〇〇」というタイトルで各分野の基礎的な内容を教えていただいています。
今回は、「下町ロケット」のモデルになったことでもお馴染みの弁護士法人 内田・鮫島法律事務所に所属する弁護士・弁理士の杉尾雄一さんに、「はじめての特許戦略」というテーマで、スタートアップ・ベンチャー企業の知財戦略についてレクチャーしてもらいました。
先に学びと感想から書きます。
こんなところです。
ここから講義の内容を書きます。
資料もいただいたので、欲しい方はここからダウンロードしてください。
昨今、ベンチャー・スタートアップ界隈で、以前よりも特許が注目されてきている。
理由としては、従来の「後発・競合に対するバリヤーを作る」「ライセンス提供することで収益を上げる」という目的に加えて、特許があることで「ファイナンス (M&A, IPO, 資金調達) にポジティブに働く」や「大企業とのアライアンスに有利になる」といった側面が事例とともに知られ、活用されるようになってきているから。
より特許が多く出てる業界、あまり出てない業界みたいなのもある。
最近だと HRTech 系が多く出てるらしい。
もう少し詳細に知財戦略の位置付けを説明すると、EXIT (IPO/M&A) のためには企業価値を向上させる必要があり、それには知財権の取得が主に
しかも、ゆーほどコストがかかるわけでも、難しいわけでもない
とはいえ、まだまだ特許戦略が機能している会社は多くないと考えられる。
例えば、梅木氏の「THE STARTUP」に掲載された「2014 年に億単位の資金調達をした 100 社」を見ると、2018 年時点でまだ特許出願件数 0 という会社が約半数。
ここから事例紹介。
Google, Amazon, Facebook, Uber など、いずれも会社設立から 1-2 年以内というタイミングで特許出願を行い、その後も継続して出願している。
Amazon の最初の特許申請はなんと会社設立前。
特許は新規性がなければ取得することができないため、先行技術が少ない段階であればあるほど、広くつよい特許を取得できる。
ベンチャー企業が知財戦略をスタートするタイミングとしては「ビジネスモデルが確立できたタイミング」がよく、その時点で基本特許の出願を検討する。
続いて「コア技術が確立できたタイミング」で基本特許 (+改良特許) の出願を行う。
「プロダクトが完成したタイミング」以降も引き続き改良特許の出願を行うのがよい。
上記を少し解説する。
理想的な知財戦略は、まず「強さ (新規性)」はそれほどでもないが「広さ (独占できる範囲)」が広い【基本特許】を取得し、その後に「狭い」が「強い」【改良特許】をとってポートフォリオを固めていくというやり方。
【基本特許】を取り損ねてしまった場合は、【改良特許】を数多く取得して防御線を固めるしかないが、どうしても隙間から他社が参入可能になってしまう可能性が出てきてしまう。
ちなみに、特許は基本的にグローバルで共通で、世界的に新規性があるものでしか特許はとれない、なので世界中の企業と競争をしているとも言える。
ただし、日本語で出願しておけば、海外で出願するのが後からになっても日本の出願日が適用される。
(パリルート、PTCルートという2つのやり方があり、コストが若干高いがメリットがあるため後者が選ばれることが多い)
Amazon にとって 3 件目の特許で、創業の 3 年後に出願され、出願の 2 年後に成立。
成立した翌月には、出願時点より後に開発されていた競合のサービスの訴訟を行い、年内に差し止めを成功させている。
また Apple にもライセンスを許諾している (収益を上げている)。
この特許が優れている点は、サービスを磨き上げる過程で出てきた、シンプルなんだけど、そのビジネスモデルでは使わざるを得ないような特許であるというところ。
Appleがライセンス提供を受けていたり、差し止めの仮処分が認められていることから見ても、1-click 特許は回避不可能なものだと思われる。
ちなみにソースコード書く前でも出願はできる (アイデアだけでもできる)。
また、先に出願はしておけば防衛はできるし、出願から 1.5 年は公開はされない (ので、すぐに改良特許を他社に出されてしまうという心配もない)。
売買の注文を入れるときの UI で、何の情報を表示・入力させているか (利幅と値幅) という内容の特許をマネースクエアが取得していた。
外為オンラインの売買注文 UI では、購入金額と販売金額を入力させているだけで、「利幅」「値幅」の数値を直接入力させているわけではなかった。
解釈は地裁と高裁でわかれた。
地裁では特許非侵害とされたが、高裁では「この画面やったら、値幅や利幅を示す情報を入力して注文している、と解釈できるやろ」ってことで特許侵害という判決が出た
この事例からの学び
創業者の林さんは One Tap Buy の前に創業した会社で、特許とらずにビジネスやっていて失敗した (ぱくられまくった) 過去がある。
One Tap Buy には代表的な機能が 7 つあり、主要機能についてそれぞれ特許をとっている。
それにより競合の機能開発を制限・牽制できている。
各特許の詳細はスライド参照。
UI 特許として回避不回避で、侵害検出性も高い (誰かが侵害していたら見てわかる)。
社長が発明王みたいなひと。
佐賀大学・佐賀県や佐賀県警 (佐賀ばっかww) との業務提携において、スタートアップでも特許を保有していたことがパートナーとして採択されたのに寄与したと考えられる。
例:ウェアラブル端末つけて農作物を見ると、収穫時期を予測して AR で表示する技術
資金調達や EXIT (M&A による) に少なからず特許が寄与した、とカブクの経営陣自身が語っている。
どれぐらいの価値貢献をしたのだろうか?
特許の価値評価には、コスト・マーケット・インカムという3つのアプローチ手法がある。
実務的には、インカムアプローチのうち「ロイヤリティ免除法」(将来のロイヤリティ収益の現在価値) で評価されるケースが大半。
タイミングは早いほうがいい (広く、強い特許がとれる)
かかるコストは 1 件 50 万円ぐらい (どの事務所でもあまり変わらない、相場形成されている)
目標・目安とすべきステージごとの件数
特許戦略に取り組む体制
こんなかんじです!
【参考】
過去の勉強会の記事、メモ
いい名前が思いつかないので「たつおゼミ」と暫定的に呼んでいるのですが、毎回スペシャルなゲストの方を講師としてお呼びして、「はじめての〇〇」というタイトルで各分野の基礎的な内容を教えていただいています。
今回は、「下町ロケット」のモデルになったことでもお馴染みの弁護士法人 内田・鮫島法律事務所に所属する弁護士・弁理士の杉尾雄一さんに、「はじめての特許戦略」というテーマで、スタートアップ・ベンチャー企業の知財戦略についてレクチャーしてもらいました。
先に学びと感想から書きます。
- 特許について思っていたよりもかなり早いタイミングから考え始めたほうがいい
- 必ずしも研究開発型のスタートアップでなくても、ビジネスモデルと UI みたいなもので特許とれたりする
- ファイナンスやアライアンスなんかでも価値を付加してくれる
- なので、特許・知財戦略を「ちゃんとやらない機会損失」はかなり大きい
- 特許をただとるだけでなく、どのような特許をとるのかという戦略が大事
- だからスタートアップの文脈や技術に理解の深い弁護士・弁理士と組むことがクリティカル
こんなところです。
ぼくの服は著作権を侵害している疑いがあります |
ここから講義の内容を書きます。
資料もいただいたので、欲しい方はここからダウンロードしてください。
昨今、ベンチャー・スタートアップ界隈で、以前よりも特許が注目されてきている。
理由としては、従来の「後発・競合に対するバリヤーを作る」「ライセンス提供することで収益を上げる」という目的に加えて、特許があることで「ファイナンス (M&A, IPO, 資金調達) にポジティブに働く」や「大企業とのアライアンスに有利になる」といった側面が事例とともに知られ、活用されるようになってきているから。
より特許が多く出てる業界、あまり出てない業界みたいなのもある。
最近だと HRTech 系が多く出てるらしい。
もう少し詳細に知財戦略の位置付けを説明すると、EXIT (IPO/M&A) のためには企業価値を向上させる必要があり、それには知財権の取得が主に
- 競業の参入障壁を構築できる
- アライアンスの材料になる
- マーケティング等に役立つ
しかも、ゆーほどコストがかかるわけでも、難しいわけでもない
とはいえ、まだまだ特許戦略が機能している会社は多くないと考えられる。
例えば、梅木氏の「THE STARTUP」に掲載された「2014 年に億単位の資金調達をした 100 社」を見ると、2018 年時点でまだ特許出願件数 0 という会社が約半数。
ここから事例紹介。
(1) GAFA や Uber など、IT 領域・プラットフォームサービス
Google, Amazon, Facebook, Uber など、いずれも会社設立から 1-2 年以内というタイミングで特許出願を行い、その後も継続して出願している。
Amazon の最初の特許申請はなんと会社設立前。
特許は新規性がなければ取得することができないため、先行技術が少ない段階であればあるほど、広くつよい特許を取得できる。
ベンチャー企業が知財戦略をスタートするタイミングとしては「ビジネスモデルが確立できたタイミング」がよく、その時点で基本特許の出願を検討する。
続いて「コア技術が確立できたタイミング」で基本特許 (+改良特許) の出願を行う。
「プロダクトが完成したタイミング」以降も引き続き改良特許の出願を行うのがよい。
上記を少し解説する。
理想的な知財戦略は、まず「強さ (新規性)」はそれほどでもないが「広さ (独占できる範囲)」が広い【基本特許】を取得し、その後に「狭い」が「強い」【改良特許】をとってポートフォリオを固めていくというやり方。
【基本特許】を取り損ねてしまった場合は、【改良特許】を数多く取得して防御線を固めるしかないが、どうしても隙間から他社が参入可能になってしまう可能性が出てきてしまう。
ちなみに、特許は基本的にグローバルで共通で、世界的に新規性があるものでしか特許はとれない、なので世界中の企業と競争をしているとも言える。
ただし、日本語で出願しておけば、海外で出願するのが後からになっても日本の出願日が適用される。
(パリルート、PTCルートという2つのやり方があり、コストが若干高いがメリットがあるため後者が選ばれることが多い)
(2) 特許が参入障壁として活用された事例① - Amazon 1-click 特許
Amazon にとって 3 件目の特許で、創業の 3 年後に出願され、出願の 2 年後に成立。
成立した翌月には、出願時点より後に開発されていた競合のサービスの訴訟を行い、年内に差し止めを成功させている。
また Apple にもライセンスを許諾している (収益を上げている)。
この特許が優れている点は、サービスを磨き上げる過程で出てきた、シンプルなんだけど、そのビジネスモデルでは使わざるを得ないような特許であるというところ。
Appleがライセンス提供を受けていたり、差し止めの仮処分が認められていることから見ても、1-click 特許は回避不可能なものだと思われる。
- 「カゴ落ち」という大きな問題を解決できる
- EC で同様の優れた UX を実現させるには回避不可能なぐらい広い
- その後も開発・特許取得を継続している
ちなみにソースコード書く前でも出願はできる (アイデアだけでもできる)。
また、先に出願はしておけば防衛はできるし、出願から 1.5 年は公開はされない (ので、すぐに改良特許を他社に出されてしまうという心配もない)。
(3) 特許が参入障壁として活用された事例② - マネースクエア vs 外為オンライン
いずれも FX のサービス。マネースクエアが老舗で、原告。売買の注文を入れるときの UI で、何の情報を表示・入力させているか (利幅と値幅) という内容の特許をマネースクエアが取得していた。
外為オンラインの売買注文 UI では、購入金額と販売金額を入力させているだけで、「利幅」「値幅」の数値を直接入力させているわけではなかった。
解釈は地裁と高裁でわかれた。
地裁では特許非侵害とされたが、高裁では「この画面やったら、値幅や利幅を示す情報を入力して注文している、と解釈できるやろ」ってことで特許侵害という判決が出た
この事例からの学び
- 特許申請時のワーディングがけっこう大事になったりする (権利範囲が変わってくる)
- 弁理士よりも、ビジネスや開発を実際にやってる人のほうが、いろいろなケースを想定できるという面もある。
- なので経営陣と弁護士・弁理士がチームを組んで、十分広くて強い申請内容を考えたほうがよい
- 日本の裁判所は諸外国に比べ、特許をビジネス戦略に使うのに不向きと言われている
- 非侵害と言われがち、罰金が低い
- なお特許侵害の立証責任は基本的に原告側にあるが、フタ開けてみないと分からないケースもあるので (コードの中身、工場内部のオペレーションなど)、請求が70%ぐらい合理的だと判断されると被告側が非侵害を立証しないといけなくなる
- 来年の特許法改正でちょっと立証しやすくはなる
- アメリカだとディスカバリーといって、被告が全部反証しないといけない
(4) 特許ポートフォリオの構築 - One Tap Buy の事例
One Tap Buy は日本初のスマホ証券。創業者の林さんは One Tap Buy の前に創業した会社で、特許とらずにビジネスやっていて失敗した (ぱくられまくった) 過去がある。
One Tap Buy には代表的な機能が 7 つあり、主要機能についてそれぞれ特許をとっている。
それにより競合の機能開発を制限・牽制できている。
各特許の詳細はスライド参照。
UI 特許として回避不回避で、侵害検出性も高い (誰かが侵害していたら見てわかる)。
(5) アライアンスの材料として活用された事例 - オプティム
2019 年 6 月時点で 356 件の特許を出願している (日本国内のみ)。社長が発明王みたいなひと。
佐賀大学・佐賀県や佐賀県警 (佐賀ばっかww) との業務提携において、スタートアップでも特許を保有していたことがパートナーとして採択されたのに寄与したと考えられる。
例:ウェアラブル端末つけて農作物を見ると、収穫時期を予測して AR で表示する技術
- すべての条件を満たしてはじめて特許侵害になる
- 「色およびサイズ」より「色またはサイズ」にしておいたほうが本当は広かったよね (もっというと「画像から識別できる情報」、のようにより一般的な形で書いておくとか) など、改良の余地がある特許のようにも見える
- ただ、それで認められるかどうかは未知数 (申請してみないとわからない)
(6) M&Aの事例 - カブク
創業からの歴史と特許- 2013 年 創業
- 2014 年 シード調達 (val 2億円)、特許出願1件
- 2015 年 シリーズA (val 7.5億円)、特許出願1件
- 2016 年 特許出願 5 件
- 2017 年 13.55 億円で双葉電子工業にバイアウト (90%)、特許出願5件
資金調達や EXIT (M&A による) に少なからず特許が寄与した、とカブクの経営陣自身が語っている。
どれぐらいの価値貢献をしたのだろうか?
特許の価値評価には、コスト・マーケット・インカムという3つのアプローチ手法がある。
実務的には、インカムアプローチのうち「ロイヤリティ免除法」(将来のロイヤリティ収益の現在価値) で評価されるケースが大半。
まとめ
特許を、ベンチャー起業の経営資源の1つとして活用しよう!タイミングは早いほうがいい (広く、強い特許がとれる)
かかるコストは 1 件 50 万円ぐらい (どの事務所でもあまり変わらない、相場形成されている)
目標・目安とすべきステージごとの件数
- シードで 1-3 件 (基本特許、重要機能)
- シリーズ A で 3-7 件 (重要機能)
- シリーズ B 以降で改良特許を順次
特許戦略に取り組む体制
- ベンチャー側からは CEO と CTO
- 弁護士・弁理士のチームを外部から
こんなかんじです!
【参考】
過去の勉強会の記事、メモ
- はじめてのマネジメント by リクルートマネジメントソリューションズ 奥野さん
- はじめてのマーケティング by Moonshot 菅原さん
- はじめての営業管理 by メドレー 田中大介さん
Casino News, Facts, Tricks, & Facts | DrmCD
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