2018/04/26

自分が正当に評価されていないと嘆く君へささげる愛のメッセージ

前職時代の後輩が、人事評価について SNS 上で毒を吐いていた。

要約すると、彼は営業として非常に高い成果を上げていた (実際すごい出来るやつ。早く AppLovin に来てほしいw) にもかかわらず、アピール・社内政治が上手い人が評価され、成果を上げている人が必ずしも最高の評価を受けないという点が不満らしい。

自分が評価されないのが辛いという刹那的な愚痴ではない。
結果に対する正当な見返りがないことや、顧客や市場ではなく社内を向いている人が高く評価されていることが、(出来る人にとって特に) 精神的に苦痛であり、優秀な人からどんどん外に出て行ってしまうであろう現状を憂いた、建設的なネガティブフィードバックだとぼくは受け取った。


まず実態としてどうなのかでいうと、ぼく自身の経験を振り返っても、多かれ少なかれ彼の指摘は正しいと思う。

自分がその組織に所属していたのは 3-7 年前とけっこうもう昔になるが、クライアントから評価され数字的にも高い成果を上げていてもアピールが不足していたため昇進を逃し (超絶望した)、そこから半年間仕事はそこそこにやって社内アピールによりリソースを割いたところ高い評価で半年後に昇進!(違う意味で絶望した) というのを経験している。

2 つの時期を比較してみて、精神的に圧倒的に充足していたのは前者の、人事的には評価されないが、同僚やクライアントからは仕事を高く評価されていた期間だった。
(最後に絶望が待っていたのだけど。笑)

その経験を経た上で、評価や報酬といったものに対する今のぼくの価値観はこんなかんじ。

どれだけイケてる組織であっても、人を 100% 正しく評価することは不可能。


前職は色んなところから書籍が出まくっているぐらい、HR 文脈で優れた仕組みを持っていると世の中的には評価されている。
そんな組織でも実態としてはこんなもんなので、いわんや一般の大企業では、である。

あなたの働きっぷりを一番よく知っているのは、あなたが日々接しているクライアントやユーザー、そしてあなた自身。

同僚も、部下も、上司も、あなたがやっていることを 100% 把握・理解することは出来ないし、その価値を正しく評価することは出来ない。
仮に彼らが自分の評価が正しいと思っていたとしても、おそらく正しくない部分は必ずあるし、あなた自身の評価と 100% 一致することはまず無いと思ったほうがいい (自分に対する期待値コントロールという意味で)。

フィードバックを謙虚に聞くことも必要であるが、一方で、自分は価値ある・意味あることをやっていると信じていて、ただそれが評価されていないとしたら。
正しいのは自分で、分かっていないのは向こうだ、ってケースはとてもとても多い!

でも正しく評価されないことを憂いても無駄、だってそれがデフォルト状態だし、今後改善される保証なんてないから。

そこは諦めちゃったほうが精神衛生上は安定すると思う。

評価をするのは上司ではない。


仮に高い人事評価をうけて、ボーナスや給料で多少報われたとして、それは人生において何か大きな意味があるだろうか。
嬉しいことは嬉しいんだけど、それは一時的な、刹那的な快楽にしかすぎなくて、中長期的な充足感・満足感や生きがい的なものをもたらすのは、ドーパミンではないのだ。

ぼくの考えでは、本当に評価されるべき相手は上司 (概念的な意味で) ではなく、同僚、クライアントやユーザー、そして数字だ。

その理由は、これだけ「個人の時代」やら「評価経済」やら言われているなか、良い仕事をしない・できないヤツだ、(パフォーマンス以外も含めて) 一緒に働きたくないヤツだと思われてしまうと、その後の人生がマジでハードモードになってしまうからだ。

どの業界も十分に狭いので、リファレンスをとるのは容易だし、いちどついた評価・評判を覆すのはなかなかに難しい。
業界変えてリセットしちゃうほうがよっぽど楽だ。(年齢的にある程度タイムリミットはあるが)

おそらく上の人よりもマーケットやお客さんのことを知っているであろう、同じレベルにいる同僚 (いわゆる peer というやつ) から評価されるというのは、高い人事評価よりもよっぽど「いい仕事」をしているというサインだ。

クライアントやユーザーから評価される仕事をしているというのも、「いい仕事」の証明だし、さらには職場や仕事内容が変わったとしてもそれらはあなたについてくる (可能性がある)。

そして定量的な数字は裏切らないし嘘をつかない。

この 3 つから高く評価されていれば、短期的に今いる組織で評価されなかったとしても、中長期的には何らかの形で見返りがあるはず。

それは今の組織における昇進・昇給や、希望の部署への異動といった形かもしれないし、もしかするとより良い条件・楽しい内容の別の仕事のオファーという形かもしれない。
そういった即物的なものではない、感謝やリスペクトといった無形のものが得られることもあろう (あるねん)。

自分が例えば何かチャレンジをするとなったときに、 この類のクレジットが溜まっている人と溜まっていない人とでは、周りから得られるサポートがマジで全然違ってくると思う。

逆に、いくら人事的に評価されていても、同僚や部下からの評価が低かったり、ユーザーやクライアントから好かれていなかったり、アピールが上手いだけで数字で結果が伴っていなかったりすると、将来的にはつらい人生が待っているんじゃないかと思う。
ギャップがある分、なおさら。


というわけで、自分が正当に評価されていないと嘆く諸君。

組織や上司から正しく評価されるというのは幻想だから諦めよう!

自分が信じる、本当に正しい、価値のあることをやろう!

同僚や、部下や、クライアントや、ユーザーが喜んで、賞賛してくれることをやろう!

そっちはきっと正しく評価されてるから安心して!

そしたら長い目で見たらきっと良い人生が待ってる!

きっとね!(願望)


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Q

2018/04/08

案件の配信停止を依頼する前に必ず読んでほしい(動画ADNWの媒体サイドの話)

動画アドネットワークの媒体 (パブリッシャ) 側の仕事をしていると、媒体や SSP からよく来る依頼がコチラ。

「●●の動画が流れると画面がフリーズしてしまう (真っ黒になってしまう / アプリが落ちてしまう / etc) ので、●●の案件の配信を停止してください」


それ、停止する前にちょっと待ってください。
あと、停止依頼する前にちょっと待ってください。

普通に考えて、動画広告を配信するときにそんな特別なファイル形式を使っているわけもないでしょう?
通常は mov とか mp4 みたいな動画ファイルを再生しているだけです。
(プラス、エンドカードに jpg, gif, png などの静止画)

なので、案件ごとに違った挙動をするわけが無いんです。
(特定の案件の動画ファイルだけ異常に容量が大きい、とかではない限り。
 普通はアドネットワーク側で容量を適切に圧縮して配信してると思うけど)

つまり、想定していない挙動が起きる原因は、案件そのものには無いっ...!

特定のアドネットワークに問題があるか...
特定の端末や OS バージョン (の組み合わせ) で問題が起きているか...
通信状況などユーザーの環境に依存する問題か...

そのへんを調査しないといけないっ...!

●●案件だけをブロックしても...無駄っ...!
とどのつまり...無駄っ...!
むしろ...収益性が落ちるだけっ...!

SSP やアドネットワークから「停止したのでもう安心です!」と言われても...
信じるなっ...!!
なんの問題の解決にも...なっていない...!

誤魔化し...目くらまし...
仕事やってる感...
もしくは良くわかっていないだけ...

まずは...問題が再現する環境 (端末、OS のバージョン、SDK のバージョン、通信環境、etc) を特定し...出来ればログデータをとる...
面倒かもしれないが...そこから始めようっ...!

なんで途中からカイジになったんだろう

Q

2018/04/03

たつおの部屋 : Webメディアをアプリ化するときに知っておいたほうが良いこと

とある Web メディアがアプリ化する (した) ということで、色々偉そうにアドバイスする機会がありました。
先方がメモをとって共有してくれたので、一部加筆編集を行ったうえで公開します!

## special thanks to 田辺さん & ciatr (シアター) チームの皆さん for taking and sharing notes! ##

映画・ドラマ・アニメをもっと楽しく。 ciatr [シアター] https://ciatr.jp/
{アプリはこちら→ iOS | Android}



【アプリと Web の違い】


アプリは DL する必要があるため、WEB より一見ユーザーを獲得するハードルが高い (WEB は検索や SNS シェア経由などで比較的簡単に入り口はくぐってくれる)。

WEB だと CPC 10〜20 円とかで 1 ユーザー (PV) 獲得できるが、アプリだとカジュアルゲームでも DL させるには 50-100 円かかったりするのが普通。

その分 DL というハードルを超えればでエンゲージメント/継続率を高めやすい。
理由の例↓
  • "ホーム画面" という特等席が得られる
  • プッシュ通知などネイティブ機能を活用できる
  • WEB よりユーザビリティ上げやすい (スマートモードなど)

故にメディアサービスは WEB で集客 → アプリという順番の事業展開は綺麗。
エンゲージメントの高い、ファネル下部のユーザーをアプリに送客していく。

→ 沢山記事を消費してくれるユーザーには、より良い体験ができるアプリに誘導する。
 ライトな一見ユーザーを無理にアプリ誘導する必要はない (WEB とアプリの住み分け)

→うまく住み分けできれば (= WEB のアクティブユーザーがアプリ移行してアクティブ度合いがさらに大きくなれば)、WEB/アプリ合計ユーザー数は変わらなくても合計 PV 数は上がっていく

いらすとや

【アプリのプロモーションの考え方】


アプリユーザーの LTV が XXX 円超えられる、など数値見えないと、ROI をポジティブにしながら継続的にプロモーションを行うのは難しい。

TVCM など露出が多く、すでに知名度が高いアプリですら CPI 100 円を超えている (メディア系アプリの場合)。

1 記事 CPM 200 円とすると (WEB の CPM 単価で計算。アプリで同じ CPM が出る保証は全くない)、5 記事読まれて 1 円の売上。1 ユーザーに平均 500 記事読ませてようやく獲得に 100 円かけられる。

なので、ビジネスモデルがネットワーク広告収入のメディアアプリは、アドネットワーク利用してグロースさせるのは基本的には難しい。
ゆえに自社 WEB などからの送客が正攻法。

必ずしもその限りではない例:
  • グロースカーブをなんとしても実現したい (次の調達に向けて、など)
  • 先に面を押さえることが競合優位につながる、ネットワーク外部性が強烈に効くビジネス (CtoC など)

ただし、純広告・サブスクリプション・コンテンツ課金など、アドネットワーク以外のビジネスモデルが成立すれば当然 LTV 上がるので、獲得単価も上げられる。

→ 優先度:ビジネスモデル仮説検証 >> 拙速なプロモーション

基本的に、メディアビジネスで、アドネットワーク収益のみで上場までいくのは困難
例外は、ゲーム攻略など "圧倒的検索ボリューム" がある一部市場

→ 故に、アプリでエンゲージメント高いユーザーを集められる & アドネットワーク以外の収益モデルの組み合わせ (純広告 and/or 課金 and/or 自社アドネットワーク構築) が成り立つことが、メディアビジネスで EXIT する条件

(いくつか女性向けメディアアプリの具体的な数値例を話したが、非公開情報 (いわゆるインサイダー) が含まれるため割愛)

参考:料理特化のクックパッドも 広告:課金 の比率は 1:2。
Cookpad 2017 年 12 月期決算説明会資料 http://pdf.irpocket.com/C2193/hHid/qWj2/TpEO.pdf

【アプリ広告の業界トレンド】


一般的にはアプリのアドネットワークは WEB と比較して単価 (CPM, CPC など) が低い。

1PV 当りの単価は下がるが、アプリになってユーザーのアクティブ率が上がっていればトータル収益は WEB より高くなる、というモデルは実現するのではないか

→故にアプリの完成度は重要。
 アプリの UX が WEB に劣るため、ユーザーをアプリに送客した結果売上が下がった、みたいな事例は最悪。どことは言えない

アプリ広告はブランド広告予算がほとんど来てない (純広告がとれている一部メディア除く)。

ゲームなどの予算がほとんど。非ゲームは TVCM を打っているようなところ。(どのアドネットワークでどんな案件が流れているかを毎日見てれば明らか)
故にゲーム利用者層がターゲットのアプリだと広告単価高くなる。

単価は、バナー or 動画 or インタースティシャルなどフォーマットによって大きく異なる。
動画がやはり高い。

アプリの広告単価が WEB より低い理由
①技術的背景:アプリは WEB と共通の Cookie でターゲティングしたり CV を追ったりすることが困難なので、WEB の案件が入ってきづらく、単価が上がらない (アプリ面においては IDFA でターゲティング、トラッキングするしかない)
②業界的背景:ブランド広告主がアプリのアドネットワークに出稿する流れがない (そもそものブランド広告主のアドネットワークへの不信感、フォーマットや metrics の業界統一が進まない、など)

現状、有力なアプリメディアは自前でブランド広告主を獲得している状況

【アプリへの広告導入のタイミング】


グロースしてから広告入れるべきか? (初期は UX 重視で広告を入れないほうがよい?)

坂本の意見としては、広告を前提とするビジネスモデルであれば最初から入れたほうが良い。

理由:
広告前提なのに、広告が入ってない状態での継続率の数値だと、検証の意味が薄れる
グロースしてから広告入れると、既存の定着ユーザーからのネガティブな反応が多くなる。最初から入れたほうがユーザーの抵抗もない (そういうものだと最初から受け入れざるをえない)
ただし日本では広告を嫌う人の声 (アプリストアのレビューなど) が大きいが、同じアプリでも継続率は日本・海外で変わらない事例があったので、単により多くのユーザーが "文句を口に出している" というだけかも。必要以上に個々の意見を気にしすぎる必要もないのでは。

アプリの特定 ver で広告を入れて、継続率への影響を見るのは良いかも。一番良いのは徐々に広告増やすのが無難で良いのでは?
けっこう早よから広告出してたけどな

【グロース分析と AppLovin】


AppLovin は広告プラットフォームなので、どこから (オーガニックなのか、Facebook 経由なのか、AppLovin 経由なのか) 獲得したユーザーがリテンション高いか、などを横断的に分析するツールではない。あくまで出稿して獲得する目的がメイン。
(AppLovin で獲得したユーザーについては、流入元アプリ別などで数字を見ることはできる)

どこ経由でのユーザーが獲得単価が安いのか、どのユーザーが継続率高いのか、など見られる 3rd party ツールがあるのでそれらで最適化していく。
詳細はすげー細かくなるので割愛。



ちなみにこの話題をもっと深堀りたい方には、昔 SearchMan 柴田さん ("決算が読めるようになるノート"、書籍 "MBA より簡単で英語より大切な決算を読む習慣" でも有名なあの方!) と対談した内容も面白いんじゃないかなと思います!
非ゲームアプリのマーケティングについて語ったよ
https://note.mu/shibataism/n/n5c6737002133


Q