2016/11/10

【後編】アジアのゲーム市場にクソ詳しい人たちのマニアックな対談

前編のハイライト

というわけで後編です!
後編はアジアとか特定の国・地域についての話ではなく、日本と海外のゲーム性や課金のさせ方の違い、Apple/Google との付き合い方、海外カジュアルゲームの新潮流とかについて語っているよ٩( 'ω' )و

そしてお待ちかね、前編では出てこなかったアプリ☆ゲット編集長の阪森さんが登場するよ!
かわりに、前編で一番人気?だったあの人物は、後編ではほぼ沈黙... (寝てた?)

それではいってみましょう!

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日本と海外の課金のさせ方の違い


黒上 (Snail Games Japan) :日本と海外の「課金で何を満たしているか」って、大きく違うよね?

坂本 (AppLovin) :ユーザーのどんなニーズを満たしてるか、ってこと? 

黒上:そうそう。海外のゲームと日本のゲームで一番違う点だと例えば、海外のゲームって体力回復とか、建物を建てるのにかかる時間短縮に課金させるケースが多いやん。ユーザーの何を満たしてるかでいうと「我慢させない」というのが多い。Time is money 的な。 

坂本:そういう系多いね。逆に、我慢すればどんだけでも無料でプレイできて。 

黒上:一方、日本のゲームって、コレクター欲とか所有欲というか、そういうのをくすぐるゲームが多い。結局「全部集めるまでの時間を短縮する」っていう観点では時短なんだけど、「ゲームクリアするまでの時短」の感覚でガチャをしちゃうと、それには直結してないから、海外のゲームユーザーからするとイライラしちゃう、みたいなのがあるみたい。 

坂本:期待とのギャップ的な。 

黒上:日本のゲームって意外と、アメリカとかでも凄く CPI 安く取れることがあるんだよね。普通に $3 とかで取れる。けど課金がうまく上がらないのはこういう点なんじゃないかなって思う。ユーザーが満足しなくて、リテンションがめっちゃ低くなっちゃうから。 

坂本:ふむ。けっこう抜本的にゲームの作りからローカライズしないといけないのかな。

これ一応オフィスです

キム (FluQuar) :スマホゲームを台湾とか中国とかに出すときも、よく現地のパブリッシャーから言われるのが「早くストーリーを追加したい」ということ。 

坂本:どういうこと? 

キム:台湾とか中国の人たちって「ストーリーそのもの」を重視で考えるところが多いから「時短で早く進めたい」っていうユーザーニーズがあるんだよね。日本のパブリッシャーからすると「キャラクター収集」とか「イベント」みたいな、「周辺でまだやれること」があるから、それをやってもらわなきゃ、っていう考え方だったりするんだよね。 

坂本:あー確かに、ぼくもストーリー進めるのと同時並行で、イベントとかやってるときは絶対やっちゃうわ。図鑑埋めたりとか。それ自体が「日本のユーザーっぽい」行動なのか。 

キム:そう。そのライセンサー・ライセンシー間のコミュニケーションがかみ合わない事例が多いんじゃないかなと思う。 

坂本:なるほどねー。面白い。でもこれ変えようって思ったら、ゲーム性もガラっと変えなきゃ厳しいよね。


デッキコストの話


黒上:あと一個だけ思うのは、「デッキコスト」の概念をゲームから無くすことが重要だと思う。そうすると、少し将来性は見えてくるはず。ガチャでもなんでも、課金してゲットしたキャラを何人でもデッキに入れられるようにする。 

坂本:そしたら「課金→強いキャラGET→楽にステージクリア」で時短に繋がるから?

阪森 (アプリ☆ゲット):でももう既に日本でも、デッキコスト系ゲームって少数派な気がする。アプリゲットでレビューするために調べてても、デッキコストを採用しているゲームは評価は下がってる傾向がある。


ようやく阪森さん登場

坂本:そうなんや〜。最初から最強キャラを使えちゃうと、序盤のステージを何の苦労もなくクリアできまくっちゃって、バランス崩れちゃう様な感覚があるのだけれども。 

阪森:黎明期は、みんながそうしてたら気付かなかったけどね。コロプラ辺りが最初にデッキコストを無くしてから、そっちがスタンダードになってきた。今はスタミナもコスト概念ももう無いから。 むしろ今スタミナとコストがあったら、ちょっと古いなって違和感を覚えるっていうレベルまできている。 

坂本:そうなんだ、、、 

阪森:海外ゲームってスタミナあるけど、ほぼ切れない仕組みになってるよね。スタミナって二年前の設計な気がして、古く感じる。ただ、デッキコストってゲームデザインの上だとすごくやり易いから、開発は楽ではあると思うよ 。コストを取っ払うとバランス調整が難しいと思う。

坂本:コストも無くて、スタミナも無かったら、ガチャの出現率でバランスとるとかかですよね。 

阪森:ユーザーのプレイ時間とかを計算した上で設計しなければいけない。そうするとユーザーにとっての難易度が高めになっちゃうので、こんどはその離脱も考慮しなければいけない。 

坂本:ユーザーのレベルがまだ低いうちは、そんなバランス崩れるようなアイテムはバンバン出さないんだけど、それだとゲームがそんなに進まないから、ちゃんと進むようにシナリオを設計しなければいけないってことか。 

阪森:ストーリーが進みづらいし、ちょっと作業感が出てしまうというのも難しい。コスト概念がないと、海外展開は楽になるのかな? 

黒上:まだマシになる気はする。今はコスト概念があるゲームも少なくなりつつあるのであれば、コスト概念自体をよく考えた方がいいのかもしれない。
 

ゲーム性の違いとプラットフォーマーとの付き合い方


坂本:あと海外の、特にカジュアルゲームを作ってるデベロッパーで日本と違うのが、戦略的にフィーチャーを狙ってるところ。
 

岡田:どういう風にやってるんですか?
 

坂本:例えば AppleTV に対応するとか。
 

岡田:なんかコンテストやってましたよね、AppLovin で。日本人が優勝したっていう。
 

参照: ロングインタビュー風!AppleTVアプリ開発で世界一になった日本の個人デベロッパ
 

坂本:伊與田 (いよだ) さんですね。日本人が優勝したのは本当に偶然で、びっくりしましたw 決勝に進んだとき彼から「3 位以内に入れなかったら、渡航費が無駄になるんですが...どうしましょう...」って相談されてたんですよ。「ダメだったらそのとき考えよう!」みたいなノリで無責任に背中を押したんですが、無事賞金とれてよかったですww
 

岡田:AppleTV にアプリ出すと実際儲かるんですか?
 

坂本:現時点ではユーザーがまだそんなにいないので、儲かるとは言えないです。が、App Store でのフィーチャーを狙うなら真剣に対応を考えていいと思います。というのも、Apple とか Google のようなプラットフォーマーって、新しいデバイスや機能に早く対応してくれるデベロッパーを大事にしてくれる傾向があると思うんですよ。
 

岡田:Apple TV とか Apple Watch みたいなのですか?
 

坂本:そうそう。あと 3D Touch みたいな機能もですね。僕も元々 Google いたんで肌感覚で分かるのですが、例えば Google Watch 出ましたみたいなタイミングって「それに対応している良いアプリがあるかどうか」って凄く重要なんですよ。
 

岡田:確かに、せっかく買っても使えるアプリが無かったりショボかったりすると、ガッカリしますもんね。
 

坂本:そういう時に真っ先に対応をしてあげると、プラットフォーマーとしても大事にしたくなる、みたいなところはあるんじゃないですかね。
 

岡田:で、フィーチャー・オススメ枠にも入れてもらいやすくなると。
 

坂本:もちろん、ゲーム自体のクオリティが、他のフィーチャーされてるアプリ並みに高いことが前提ですけどね。そこも含めて、海外のカジュアルデベロッパーは、超真剣にフィーチャー枠を狙いに行ってる。
 

岡田:日本のカジュアルデベロッパーは確かにそうでもないですね。
 

坂本:もちろん日本にも、毎回良いゲーム作ってて、かつプラットフォーマーとも仲が良くて、高確率でフィーチャーされてるカジュアルデベロッパーもいくつかありますよ。でも、今そうでないデベロッパーはそこを目指してフィーチャー枠を狙いに行くかわりに、アップトーキョーしたりとか、アプリの中にスペースがある限り広告で埋めたりとか...
 

岡田:あえてフィーチャーから遠ざかる動きをしてるとこも多いですよね。
 

坂本:そーなんですよ。。例えば、本当にフィーチャーを狙ってる会社の例でいくと、各国でフィーチャーされているアプリの傾向を調べて、次の予測立ててから作り始めたりとかしてますね。まぁ日本の市場だけを見るんなら、フィーチャー狙わずにアップトーキョーとかゴリゴリやって、短期的な収益最大化を狙うっていうのは有りなのかもしれないけど...
 

阪森:そもそも日本のユーザーがアクション系のカジュアルを求めてない気がしていて。日本製だろうが、海外製だろうがあんまりハマってるのがなくて。
 

坂本:ほほう...


ヒットするカジュアルゲームのカテゴリの違い


阪森:アプリゲットで海外の人気のアクション系カジュアルゲームに、翻訳もつけてレビューをすることがあるんだけど、あんまり数値も伸びなくて。それよりも放置育成系の方が反応が良いですね。

大学生の頃「宅飲み」してたのを思い出しました
  
岡田:放置育成系こそ、日本人の習慣っぽい気がしていて。世界ではアクション系のカジュアルが流行っている気がする一方で、日本で人気な、日本を代表する有名タイトルって、アクションよりも RPG に多い気がします。
 

坂本:古くからあるドラクエ・FF の系譜ね。
 

岡田:RPG ってコレクション要素が強い気がしてて。日本で出して海外で爆発的にヒットしたタイトルだと、マリオやロックマン、ソニックとか凄くアクション系が多いと思うんですよね。FF やドラクエも流行ってはいますが...
 

坂本:日本での人気を考えると、それほどでもないね確かに。
 

岡田:なんか海外の人々と比べると、根本的にゲームの楽しみ方が違う気がしまして。
 

黒上:大陸で結構違うもんね。結局アジア圏って何を大事にするかって「自慢できること」だと思うんだよ。コレクションして自慢したりとか、こんだけ強いぞみたいなのを自慢したりとか。
 

坂本:前編での「自慢できるじゃん?ww」がこんなとこで効いてくるのか。
 

黒上:中国とか韓国とかってそれが結構顕著だと思うんだけど。北米のゲームって、ユーザー本人のスキル上げだよね。日本人がやる音ゲーみたいなもんで。

カジュアルゲームのマネタイズの違い


岡田:あと、動画広告って海外で先行で流行ったと思うんですけど、凄くアクションゲームに相性が良いですよね。コンティニュー課金とか。日本のカジュアルゲームってバナー広告中心のものが多い気がしてるので、海外攻めるとしたらもっとアクション性の強いものをつくらなきゃ難しいのかもしれないですね。

坂本:マネタイズの話でいくと、日本だと広告ガンガン入れまくっていけば 1DL 50 円とかいったりするじゃないですか。でも 50 円以下でユーザー獲得できる手段って、アップトーキョーか、YouTuber や IP とか元々人気のものに乗っかるか、しか無くて。 

岡田:アップトーキョーに怒られないですかこれ。 

坂本:日本から海外を攻めるときは、そういう手段も使えないからそもそも厳しい。だから、海外でやっていけてる日本のカジュアル系のタイトルは、基本は Apple・Google と仲良くて、リリースしたらグローバルでフィーチャーされて、でもそれ以降はユーザーが入ってこなくて中ヒットで終わる、って系が多い気がする。 

 どこかの社外秘の資料が投影されているはず

岡田:海外とかで Clash of Clans とかを超えているカジュアルゲームとかってあるんですかね? 

坂本:売り上げを抜かすとまではいかないけど、日本のカジュアルゲームの標準から考えると考えられないぐらい売り上げている会社はあるよ。広告だけで 1 日数百〜1 千万円とか。 

岡田:ふわぁ。 

坂本:あと、カジュアルゲームってソシャゲとかと比べると CTR や CVR が良いんで、CPI で見るとめっちゃ安くとれるんですよ。ソシャゲはダウンロードする前にすごい吟味するけど、カジュアルゲームは「とりあえずやってみっか」って気軽にインストールするんでしょうね。 

岡田:いくらぐらいで取れるんですか? 

坂本:引きが強いアプリは、AppLovin の動画広告でも日本で 1 インストール 50-80 円くらいで取れてたりします。そこそこのアプリでも 100-150 円ぐらいで、日に数十〜数百インストールは取れますね。 

岡田:そんな値段で取れるもんなんですね。 

坂本:実はそうなんですよ。日本のカジュアルゲームのデベロッパーさんも何社かやってます。で、課金も含めて 150-200 円ぐらいの LTV があれば、100-150 円でとれば、粗利がずっと発生する形になるので、ぐるぐると回し続けることができるよね、っていう。これができている日本のカジュアル系はまだ全然少ないですよ。 

岡田:海外だとそういうところがあると。 

坂本:中国の Cheetah Mobile の Piano Tiles 2 (iOS | Android) や Rolling Sky (iOS | Android) とか、最近だと韓国 BitMango の Block Hexa Puzzle (iOS | Android) とか、売上も広告出稿量も凄いですよ。だから、仲のいいデベロッパーさんとは最近、AppLovin 使ってよ〜って話とかはほとんどせずに、さっきみたいな仕組みをどうやったら作れるかって議論を一緒にしてます。

ゆーほど飲んでないけど盛り上がった

岡田:日本からもそういうアプリが出てきますかね。 

坂本:ゲーム自体は良いのが多いので、お作法を覚えれば可能性あると思いますよ。バナー外して、フラットデザインにして、AppleTV 対応とかして、課金も入れて。それで LTV 100-200 円狙えるようになったら動画作って広告回して、みたいな。 

黒上:意外とカジュアルゲームとかの方が海外に進出できるのかもしれないね。 

坂本:全然できる気がする。 

阪森:やんなきゃいけないことが、グッと減るからね。

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