とある超大手アプリパブリッシャさんから、こんな質問があった。
皆さん、明確に答えられるだろうか。
広告主は CPI で出稿しているのに、メディア (媒体) 側は eCPM を指標にするのは何故ですか?
「他社アプリのインストールで収益があがる」ことを、メディアに隠したいからなのでは? と勝手に思っています。
先生、教えてください!!
なかなか本質的で、かつ、あまり分かりやすい説明が世に出てないと思うので、ここで解説しておこう。
そもそも媒体に eCPM で見せているのは、CPI で見せても正しく評価できないから、というのが最大の理由である。
例えば
が、CPI だけを見ると、あたかも 1) のほうが高いように見えてしまう。
広告ネットワークがやろうと頑張っていることは、案件が CPI だろうが CPC だろうが CPM だろうが、単価・クリック率・インストール率などのすべての指標を勘案した上で、最も媒体にとって収益が高くなるような案件を配信することだ。
(正確には、インプレッションあたりの収益性を最大にすること)
なので、最終的にもたらされた eCPM で判断するのが公平ということになる。
また、AppLovin をはじめとする多くの広告ネットワークでは、 CPI, CPC, CPM の全てあるいは複数の種類の案件が、混じって配信されている。
媒体にとって収益発生タイミング (= 広告主に費用が発生するタイミング) が、広告が表示された時点・クリックされた時点・アプリがインストールされた時点、のパターンがあるということだ。
なので、媒体に対しての指標 (媒体が広告ネットワークを評価する指標) として、CPI で見せすることがそもそも出来ない。
(日本では広告主に対して CPI で売っているケースが多いようだが、仕組みとしては CPI 以外の案件も流せるようになっているはず)
もう少しだけ専門的な話をすると、AppLovin が多くの案件を CPI ではなく CPC で配信している理由は大きく 2 つある。
1) はこの blog を含む色んなところで言っている内容だが、「インストール後に全く課金しないユーザー」ばっかり獲れる媒体に CPI を固定で払うのは、ROAS (広告費用対効果) の観点から非効率である。
逆に、課金ユーザーがたくさん獲れる媒体に対しては、単価をもっと上げてもいいからさらに多くのユーザーをそこから獲りたい、と広告主は思うはず。
なので、ROAS が低い媒体に対しては CPI 目標を低くし、ROAS が高い媒体に対しては CPI 目標を上げてよりボリュームをとる、という最適化を自動で行っている。
広告主から「CPI 固定でいくら」で受注してしまうと、この最適化が出来ないので、配信を CPC で行うことになるわけだ。
2) については、たとえば標準的なクリック率とインストール率をともに 10% だと仮定する。
(動画・全画面広告メインなので)
CPI で配信していると、最適化を開始できるまでの間に、かなり時間がかかってしまうのである。
例えば上記の場合、100 インプレッション時点でようやく 10 クリックぐらいで、1 インストールあるかないか。
インストールがゼロの媒体も、たまたまその時点では無いだけかもしれないので、そのまま配信をし続ける必要がある。
要するに、それぞれの配信面について、広告案件との相性の良し悪しを判断するために十分な量のデータが、相当数のインストールが発生するまで溜まらないということになる。
その結果何が起こるかというと、広告主は相性の悪い媒体に対してもかなりの量を配信してしまう。
広告主はインストールされるまでお金を払わなくていいので余りリスクは無いのだが、媒体にとってみると、全然インストールされない案件を流し続けることになるので、eCPM が低くなってしまう。
なんか、全然うちのユーザーと相性よくなさそうな案件ばっかり、ずっと流れているなぁ...
と思ったことがあるメディアは、こいつのせいかもしれない。
これを CPC で配信していると、インストールが発生する前でも「クリックされやすい媒体・されにくい媒体」はデータとして判断できるので、よりクリックされやすい配信面に多くのインプレッションを出すということが出来るようになる。
その後、十分な量のインストールが発生し始めてからは、インストールされやすい面への配信を増やす (十分な量の課金が発生し始めてからは、ROAS の良い面への配信を増やす) という風に、最適化のロジックを都度変化させていっている。
なので媒体にとっては、全然クリックされない相性の悪い案件が、すぐに配信されにくくなっていくので、高い収益性が初めからキープできる。
なのに何故多くのアドネットワークは CPI で売っているかというと...
本社と日本法人・販売代理店の契約だったり、広告主に売るときは CPI のほうが楽 (あまり高度なセールスをしなくても簡単に売れる) という事情があったり...
色んな理由があるようだ。
ウチは愚直に広告主に対して、CPC のほうがパフォーマンス (費用対効果) が高くなるということを何度も説明して納得してもらい、一部の例外を除いては CPI 案件は受けないようにしている。
(CPI でも十分高いパフォーマンスが出ると判断できた場合は、その限りではないが)
Q
皆さん、明確に答えられるだろうか。
【質問】
広告主は CPI で出稿しているのに、メディア (媒体) 側は eCPM を指標にするのは何故ですか?
「他社アプリのインストールで収益があがる」ことを、メディアに隠したいからなのでは? と勝手に思っています。
先生、教えてください!!
なかなか本質的で、かつ、あまり分かりやすい説明が世に出てないと思うので、ここで解説しておこう。
【回答】
そもそも媒体に eCPM で見せているのは、CPI で見せても正しく評価できないから、というのが最大の理由である。
例えば
- CPI 50,000 円で、クリック率 1%、インストール率 1% の案件
- CPI 1000 円で、クリック率 10%、インストール率 10% の案件
が、CPI だけを見ると、あたかも 1) のほうが高いように見えてしまう。
広告ネットワークがやろうと頑張っていることは、案件が CPI だろうが CPC だろうが CPM だろうが、単価・クリック率・インストール率などのすべての指標を勘案した上で、最も媒体にとって収益が高くなるような案件を配信することだ。
(正確には、インプレッションあたりの収益性を最大にすること)
なので、最終的にもたらされた eCPM で判断するのが公平ということになる。
また、AppLovin をはじめとする多くの広告ネットワークでは、 CPI, CPC, CPM の全てあるいは複数の種類の案件が、混じって配信されている。
媒体にとって収益発生タイミング (= 広告主に費用が発生するタイミング) が、広告が表示された時点・クリックされた時点・アプリがインストールされた時点、のパターンがあるということだ。
なので、媒体に対しての指標 (媒体が広告ネットワークを評価する指標) として、CPI で見せすることがそもそも出来ない。
(日本では広告主に対して CPI で売っているケースが多いようだが、仕組みとしては CPI 以外の案件も流せるようになっているはず)
もう少しだけ専門的な話をすると、AppLovin が多くの案件を CPI ではなく CPC で配信している理由は大きく 2 つある。
- 広告主の価値を最大化するため
- 学習のスピードを速くするため
1) はこの blog を含む色んなところで言っている内容だが、「インストール後に全く課金しないユーザー」ばっかり獲れる媒体に CPI を固定で払うのは、ROAS (広告費用対効果) の観点から非効率である。
逆に、課金ユーザーがたくさん獲れる媒体に対しては、単価をもっと上げてもいいからさらに多くのユーザーをそこから獲りたい、と広告主は思うはず。
なので、ROAS が低い媒体に対しては CPI 目標を低くし、ROAS が高い媒体に対しては CPI 目標を上げてよりボリュームをとる、という最適化を自動で行っている。
広告主から「CPI 固定でいくら」で受注してしまうと、この最適化が出来ないので、配信を CPC で行うことになるわけだ。
2) については、たとえば標準的なクリック率とインストール率をともに 10% だと仮定する。
(動画・全画面広告メインなので)
CPI で配信していると、最適化を開始できるまでの間に、かなり時間がかかってしまうのである。
例えば上記の場合、100 インプレッション時点でようやく 10 クリックぐらいで、1 インストールあるかないか。
インストールがゼロの媒体も、たまたまその時点では無いだけかもしれないので、そのまま配信をし続ける必要がある。
要するに、それぞれの配信面について、広告案件との相性の良し悪しを判断するために十分な量のデータが、相当数のインストールが発生するまで溜まらないということになる。
その結果何が起こるかというと、広告主は相性の悪い媒体に対してもかなりの量を配信してしまう。
広告主はインストールされるまでお金を払わなくていいので余りリスクは無いのだが、媒体にとってみると、全然インストールされない案件を流し続けることになるので、eCPM が低くなってしまう。
なんか、全然うちのユーザーと相性よくなさそうな案件ばっかり、ずっと流れているなぁ...
と思ったことがあるメディアは、こいつのせいかもしれない。
これを CPC で配信していると、インストールが発生する前でも「クリックされやすい媒体・されにくい媒体」はデータとして判断できるので、よりクリックされやすい配信面に多くのインプレッションを出すということが出来るようになる。
その後、十分な量のインストールが発生し始めてからは、インストールされやすい面への配信を増やす (十分な量の課金が発生し始めてからは、ROAS の良い面への配信を増やす) という風に、最適化のロジックを都度変化させていっている。
なので媒体にとっては、全然クリックされない相性の悪い案件が、すぐに配信されにくくなっていくので、高い収益性が初めからキープできる。
なのに何故多くのアドネットワークは CPI で売っているかというと...
本社と日本法人・販売代理店の契約だったり、広告主に売るときは CPI のほうが楽 (あまり高度なセールスをしなくても簡単に売れる) という事情があったり...
色んな理由があるようだ。
ウチは愚直に広告主に対して、CPC のほうがパフォーマンス (費用対効果) が高くなるということを何度も説明して納得してもらい、一部の例外を除いては CPI 案件は受けないようにしている。
(CPI でも十分高いパフォーマンスが出ると判断できた場合は、その限りではないが)
Q
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